公開日 2026.09.24

SPECIAL

島根大学とへるん入試【広報しまだいアーカイブ】


新たな視点“学びのタネ”で入試改革

  • 理事(教育担当) 松崎 貴 ✕
         大学教育センター・准教授 中村 怜詞

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大学入学共通テストを課さない入試として注目を浴びた、総合型選抜入試「へるん入試」。
その一期生が卒業を迎え、3月に卒業成果発表会が開催されました。
2024年度からは新たな教育プログラム「クロス教育」も導入され、
黎明期を迎えている島根大学の学び。そこに込められた想いに迫ります。
(この記事は過去に広報しまだいに掲載されたものをShimaDAY用に再掲載するものです)

目次

学びに向かう姿勢を重視した「へるん入試」
込めた願いと、学生の学びの変化

 

2021年度入試から導入した、へるん入試。
松江市にゆかりのある小泉八雲の愛称にちなんで名付けました。小泉八雲は、文学者・新聞記者・民俗学者・英語教師などとして多方面で才能を発揮しながら、異文化の架け橋となり愛される人物。そんな「へるん」の魅力と才能の多様性を、高校生の持つ多様な可能性に重ね合わせ、自分らしい学びを主体的につくっていこうとする意欲を島根大学の学びにつなげてほしいという願いを込めています。

島根大学がへるん入試をはじめた背景には、「時代の変化」があります。
これからは、激しい変化が予想され、これまでの常識が通用しない「VUCA(※)」と呼ばれる時代。その時代を担っていく若者は、答えがない複雑な課題に対しても、主体性や創造性を持って切り開いていく必要があります。
そのような時代において、大学教育にも、知識や技能はもちろんのこと、学ぶ意欲や、自分で課題を見つけ、主体的に判断・行動し、他者と協働して課題解決に挑戦していく人材を育成することがより求められるようになりました。
そこで、「へるん入試」では、高校生がもっている知的好奇心や探求心を「学びのタネ」と定義し、学力のひとつの要素になっている「学びに向かう姿勢」の評価を特に重視して設計しました。
※Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語

教育担当理事松崎貴

「学びのタネ」をもっている学生は、自分がどのようなことを学ぶ必要があるのか意識して入学している分、大学で学んだことを「学びのタネ」にどんどん肉付けして変化させ、新しい世界を作っていくことが得意です。また、他者と関わりたいという意欲も旺盛です。

松崎 研究を進めるには、多くの知識を持っているだけでなく、それを生かして他者と協働することがかぎとなってきます。たとえば、専門分野が違う相手と議論をしたときに、自分の考えをより適切に相手に伝えることや、自分たちが取り組んでいる課題について〈どうすれば、もっと良くできるのか?〉という視点で互いの知識や考えを深め合ったことがきっかけで、別の切り口から新たな研究の種が生まれ、課題の解決に近づくことがあります。

中村 実際、地元の企業が抱える課題に学生たちが取り組む授業では、自分の意見を活発に発言しています。一般入試で入った学生も含めて意見を交換し合う過程で〈なるほど、そういう視点があったのか〉と、お互いに気づきを与え合うという好循環も生まれています。

松崎 異なる入試方法で入った学生の存在が、大学全体の学びの質の向上にもつながっていると感じています。

好奇心や探求心をもった学生こそ
へるん入試に挑戦してほしい

大学入学共通テストを課さないことから、へるん入試がはじまった当初は、一般入試で入った学生と学力の差が出るのではないかと懸念されていました。しかし、大学で修得した単位の成績評価の積算値を表す「GPT」を見てみると、へるん入試で入った学生と一般入試で入った学生で、卒業時の成績に差はありませんでした。
また、一期生の進路を見ても、法律と経済を学んだことで自身のやりたいことが明確になり厚生労働省に就職した人、自身の学びをさらに深めたいと大学院に進学した人などがいて、それぞれの「学びのタネ」を4年間で立派に育てた様子。

松崎 日本の教育は〈できないところ〉に目を向ける傾向があって、どうしても自己肯定感が低くなったり、学修に対する意欲が低下したりしてしまいます。しかし、卒業成果発表会でへるん入試の一期生を見ていると〈自分のやりたかったことを思う存分に学ぶことができた〉という自信に満ち溢れた表情をしていました。未来を語る表情もキラキラしていて、本当に誇らしかった。自分がやりたいことをとことん追究して、育てていける環境が島根大学にあることを、中・高校生たちにもっと知ってもらいたいです。

 

へるん入試卒業生の声

総合理工学部知能情報デザイン学科卒業
常松 麗華さん
ITを活用して農業を支援したいという「学びのタネ」をもち、専門高校の商業科から入学。
最初は授業についていけるか不安でしたが、友人同士で得意分野を教え合うことで問題はありませんでした。
ITに関する専門知識を学べただけでなく、県内企業との共同研究にも参加できて充実した4年間を過ごしました。
高校生のころは、まさか自分が国立大学に進学できるなんて思ってもみませんでした。
高校生のみなさんはどうか自信をもって、自分の情熱を面接でぶつけてください。(写真は研究室での作業風景)

 

自分の可能性を拡げる「クロス教育」

島根大学での学びの全体像

これまで、学生の専門性を高めることを主な目的としてきた大学での学び。しかし、複雑かつ予測困難な現代において、今求められるのは、自分の専門性と異分野・異領域の知識を組み合わせ、創造的な解を導き出すことができる人材。
本学では、自身の専門領域にとどまらず、複数の領域を越境(クロス)して学び、多角的な視点やスキルを身につけられるプログラム「クロス教育」をはじめました。
教授陣によって精選された授業科目を組み合わせたプログラムが複数用意され、学生は単位を絡めながら、所属する学部や学科の高度な専門性の獲得を目指すカリキュラムで学びながら、同時に他のテーマや分野にも挑戦できるのが「クロス教育」の特徴です。

大学教育センター准教授中村怜詞 松崎 他の分野の人たちと協働して問題を解決しなければならないとき、その分野の人たちとの共通言語や共通する考え方を知っていると、それだけで物事がスムーズに進みます。
中村 自分の学問領域とは違う見方や考え方が身につくと、それまで見ていたもの・ことの捉え直しができるようになって自己の成長に繋がります。また、異なる知識や視点を組み合わせることで生まれるイノベーションにも大いに期待しています。 提供されるプログラムは3段階にわかれており「もっと時間をかけて地域問題解決に取り組みたい」「自身でプロジェクトを立ち上げたい」など、熱意をもった学生の受け皿になっているところも大きな特徴です。
松崎 大学とは、自分の中にある先入観を壊し、拡げていく訓練の場なのです。自分の軸をもって学び、さらにさまざまなところに目を向けられる“心の強さ“をもった学生は、どこに行っても活躍できると私は信じています。そしてそういった人材が将来、島根大学に戻り、地元の課題解決に貢献してくれるとうれしいですよね。新しい視点を見つけ、混迷な時代を切り拓くリーダーを育成する。そういう面では、クロス教育もへるん入試も、目指す方向は同じなのです。

 
 

クロス教育受講生の声

クロス教育受講生の声①

法文学部社会文化学科 切通瑠依さん
自分のライフプランが明確になっていない状態で大学に入学したので、将来への不安を少しでも取り除きたいと「キャリアデザインプログラムベーシックコース」の履修を決めました。
さまざまな社会経験を積まれた講師陣のお話を聞きながら、日本社会の実態について学んでいます。
このプログラムを通して、自分のキャリアをどうデザインしていくか、そしてこれから先の長い人生を自分らしく生きるためにどうすればよいのかを考えたいです。

 
クロス教育受講生の声②

法文学部法経学科 時山怜花さん
「ヨーロッパ言語文化実践力養成プログラム」と「グローバル・コミュニケーションプログラム」を履修しています。
後者を選択したのは、将来、海外と関わる仕事に就く可能性を視野に入れているから。
実は、入学直後は将来の方向性が定まっていませんでしたが、クロス教育を通じて、自分の目標を見出すことができました。
自分の興味や関心を広げ、将来に繋げてくれるクロス教育、そして熱心に指導してくださる先生方に感謝しています。
へるんスクエア | 島根大学

 

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