公開日 2026.09.17

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材料を学ぶ,その先へ。2027年4月,材料エネルギー研究科誕生​

材料×情報の学びを、その先へ。
2027年4月、島根大学大学院に「材料エネルギー研究科」が誕生します。

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「材料」は、現代のものづくりや先端技術を支える基盤の一つ。
スマートフォンや自動車、蓄電池、医療機器、太陽光発電設備など、私たちの暮らしを支えるさまざまな製品や技術。その性能や機能の向上には、材料の性質や構造に関する研究が深く関わっています。
島根大学では、2023年度に材料エネルギー学部を開設しました。金属や化学をはじめとする材料分野に加え、プログラミングやデータ解析などの情報技術、エネルギーや環境について幅広く学ぶことができる学部です。
そして2027年4月、この学部で培った学びをさらに深める場として、大学院「材料エネルギー研究科」が開設されます。
研究科では、材料と情報を組み合わせた研究に加え、材料のライフサイクルやエネルギー・環境問題までを広く捉え、研究成果を社会につなげることを重視。
専門分野を深く学ぶだけではなく、異なる分野の知識を組み合わせ、社会の課題を見据えながら研究・開発に取り組む。これからのものづくりを担う人材を育てるための、新たな学びが始まります。2026年9月からは学生募集もスタートします。
「材料エネルギー研究科」では、どのような学びが展開され、どのような人材の育成を目指しているのでしょうか。
島根大学の大谷学長、材料エネルギー学部の三原学部長、そして大学院進学を目指している材料エネルギー学部の学生2人への取材を通して、その教育内容と可能性を紹介します。

目次

材料と情報を組み合わせ、新しいものづくりへ

 

材料エネルギー研究科の大きな特徴の一つが、「材料」と「情報」を組み合わせた教育・研究です。
材料分野で扱うのは、金属、セラミックス、有機材料、無機材料など。それぞれの性質や構造を理解し、より優れた材料を生み出すための研究が行われています。
一方、情報分野では、プログラミングや機械学習、データ解析、シミュレーションなどの技術が発展しています。
こうした異なる分野を別々に学ぶのではなく、一つの研究体系の中で扱う。それが、材料エネルギー研究科の特色です。
例えば、実験によって得られた材料の組織や物性に関するデータを計算モデルに取り込み、シミュレーションや予測に活用する。そこで得られた結果を、材料の設計や開発へとつなげていきます。
さらに、情報技術を材料開発の補助手段として使うだけではありません。
材料研究から生まれた課題が新たな情報技術の開発につながり、その技術が材料研究をさらに進める。材料と情報が互いに関わりながら、研究を発展させていくのです。
材料と情報を一体的に扱うことで、これまでとは異なる材料開発の方法や、研究開発の効率化にも取り組みます。

3つの視点から、研究の可能性を広げる

 

材料エネルギー研究科では、専門分野を深く掘り下げるだけでなく、異なる知識を組み合わせ、材料を取り巻く環境や社会まで視野を広げながら、研究成果を実社会につなげることを重視しています。
その教育を特徴づけるのが、「融合」「俯瞰」「実装」という3つの視点です。

融合――異なる知識を組み合わせる

一つ目は「融合」。
材料に関する専門知識と情報技術を組み合わせ、材料のデータを取得・解析・予測し、設計へと応用していきます。
一つの専門分野だけでは解決が難しい課題に、異なる分野の知識を掛け合わせてアプローチする。研究の可能性を広げるための視点です。

俯瞰――材料を取り巻く環境まで考える

二つ目は「俯瞰」。
今、材料製造時に必要な膨大なエネルギーをどう抑えるかに注目が集まっています。
しかし、材料はつくって終わりではありません。
材料の開発から設計、製造、利用、回収までを一連の流れとして捉え、エネルギーや環境、社会との関係まで考えます。
どのような材料をつくるのか。どのように製造するのか。製品としてどのように使われるのか。そして、役目を終えた後にどのように回収・再利用されるのか。
目の前の研究対象だけでなく、その材料が社会の中でどのような役割を果たすのかまで視野を広げる。それが「俯瞰」の考え方です。

実装――研究成果を社会につなげる

三つ目は「実装」。
大学院での研究は、論文を書いて終わりではありません。
社会にはどのようなニーズがあるのか。その研究成果を、どのように製品や技術、社会の仕組みへつなげられるのか。
材料エネルギー研究科では、修士論文の研究テーマを軸に専門性を深めながら、研究成果を社会で生かす道筋についても考えます。
必修科目である「材料・エネルギー技術の社会実装」では、専門的な研究と社会との接点を意識し、研究成果を事業化する構想まで視野に入れて学びます。
専門を深めながら、異なる分野へ目を向け、さらにその先にある社会とのつながりまで考える。研究をより広い視野で捉える学びが、ここにあります。

大学の中だけで終わらない。
産業・地域との接点を重視した学び

材料分野は、製造業をはじめとする多くの産業と深く関わっています。
島根県内にも、特殊鋼をはじめ、材料に関する高度な技術を持つ企業が数多くあります。島根大学では、次世代たたら協創センター(NEXTA)などを通じて、地域企業との共同研究も進められています。
大学院では、産業界の第一線で活躍する技術者から、実際の現場が抱える課題や、企業で求められている技術について学ぶ機会も設けられています。
現場に触れることで、自分が身につけてきた知識が実際の課題にどう生かされるのかを知る。一方で、まだ知らないことや、自分の知識だけでは解決できないことにも気づく。
そうした経験が、さらに専門的に学びたいという意欲にもつながっていきます。
材料と情報の知識を生かし、地域企業の技術開発や品質向上、新たな事業の創出に関わっていく。大学で得た専門性を実社会へつなげることも、研究科が担う役割の一つです。

島根大学 大谷学長が語る。「材料」は、暮らしを支える技術の土台

 

エネルギー研究科が育成を目指すのは、材料分野の専門知識だけを身につけた研究者・技術者ではありません。
一つの専門領域だけにとどまらず、材料と情報を組み合わせ、社会や環境、エネルギーの問題まで広く捉えたうえで、研究成果を社会へつなげられる人材です。
材料の研究に情報技術を取り入れれば、データの解析や予測を、新たな材料の設計・開発に生かすことができます。
さらに、材料がつくられてから使われ、やがて回収・再利用されるまでを考えれば、エネルギー消費や環境負荷、資源の利用といった課題も見えてきます。
そして、研究によって得られた成果を、製品や技術としてどう社会に届けるのか。
専門性を深めるだけでなく、その知識をどこへ、どうつなげていくのかまで考えることが、大学院での学びにつながっています。
また、材料は決して遠い存在ではありません。
スマートフォンや自動車、さらには芸術・文化を支える素材や日常の生活必需品など。私たちの身近にあるさまざまな製品や技術を、その根底で支えているのが材料です。
「どのような材料をつくるか」は、製品の性能だけでなく、エネルギー消費や環境負荷、資源の利用にも関わります。
島根大学では、2023年度に材料エネルギー学部を開設。2027年4月に研究科が開設されることで、学部4年間と大学院2年間を通じた6年間の学びを見据えた教育環境が整います。
大学院では、材料、化学、情報、エネルギーに関する知識をさらに深めながら、材料データの取得、解析、予測、シミュレーション、設計までを一体的に学びます。
企業での講義や現場見学などを通じて、研究室の中だけでは見えない産業界の課題に触れ、自分の研究を社会とどう結びつけるかを考える機会もあります。
大谷学長は、高校生に向けて「新しい材料をつくり、未来の社会を支えたい」という思いを持つ人に、この学びに触れてほしいと話します。

三原学部長が語る。大学院で身につけてほしい「開発力」

 

材料エネルギー学部の三原学部長が、大学院で学生に身につけてほしい力として挙げるのが「開発力」です。
工学の研究では、まだ世界の誰も明らかにしていないことを解き明かし、社会に役立つ技術や製品につなげていくことが求められます。
当然、最初からうまくいくとは限りません。
仮説を立て、実験や計算を行う。思ったような結果が出なければ、その原因を考える。そして、知識や工夫を重ねながら、もう一度取り組む。
そうした試行錯誤の積み重ねが、未知の課題に向き合い、解決へ近づいていく力になります。
三原学部長は、こうした経験を重ねることが、エンジニアとしての「開発力」につながると考えています。
そのため研究科では、金属工学、応用化学、情報工学などの知識を組み合わせるだけでなく、エネルギー問題と材料開発を関連づけて考える科目や、研究成果と社会とのつながりを考える科目も用意されています。
企業との連携も、学生にとって重要な学びの機会。
現場の技術者から直接話を聞くことで、実際の産業にはどのような仕事があり、どのような課題があるのかを知ることができます。
そこで「自分にはまだ知らないことが多い」と気づくこともあるでしょう。
その一方で、自分が大学で学んできた工学の知識や基礎的な技術が、実社会の課題解決につながることを実感する機会にもなります。
広い知識を身につけながら、一つの専門を深く掘り下げる。
そして、未知の課題に対して、自分で考え、試し、解決へ向かう。
それが、三原学部長の考える「開発力」です。

「もっと研究したい」大学院進学を目指す2人

ここまで、研究科が目指す教育について見てきました。
では、実際に大学院へ進学しようとしている学生は、どのような理由で進学を決めたのでしょうか。
現在、材料エネルギー学部4年生で、2027年4月から大学院への進学を志望している2人に話を聞きました。

同じ「材料」でも、見ている世界は違う

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原子の世界をコンピュータで探る――Kさん(榎木・唐研究室)

Kさんが材料エネルギー学部を選んだきっかけは、エネルギー問題への関心でした。
高校生のとき、大学の先生による講義を聴き、エネルギー変換の効率を高めることが、二酸化炭素の排出量や石油の輸入コストの削減につながることを知りました。
エネルギー問題の解決に、材料開発という立場から関わりたい。
そう考え、材料科学と情報科学を組み合わせて学べる材料エネルギー学部に進学しました。
現在取り組んでいるのは、銅合金の「積層欠陥エネルギー(SFE)」に関する研究です。
SFEは、結晶中の原子の並びに「ずれ(積層欠陥)」が生じたときのエネルギーの大きさを表す指標です。。銅に別の元素を加えることで、原子の並び方や転位の動きが変化し、材料の強度や加工性にも影響します。
Kさんは、第一原理計算とモンテカルロ法を使って、銅合金の原子レベルの状態をコンピュータ上で調べています。
特に興味深かったのが、添加した銀原子の配置によって、SFEの値が変化することでした。
同じ元素を加えたとしても、それがどこに、どのように存在するかによって、材料の性質が変わる。
「たった一つの原子の配置が、材料の強さに影響する」。
原子レベルの世界をコンピュータ上で調べる研究に、Kさんは面白さを感じています。
4年間の学びを通して計算手法を身につけ、研究にも活用できるようになったことで、「ここで研究を終えるのはもったいない」と感じるようになりました。
学会発表の準備を進める中でも、もっと研究を深めたいという思いが強くなり、大学院への進学を志望しました。
大学院では、現在行っている計算だけでなく、実験にも取り組みたいと考えています。
コンピュータ上で予測した結果を、自分自身で実験して確かめる。
計算と実験の両方から材料を捉え、より深く材料設計について研究したいと話します。

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実際の材料を観察し、壊れる仕組みを探る――Tさん(森戸研究室)

一方、Tさんが研究しているのは、実際の鉄鋼材料です。
Tさんは、材料エネルギー学部を選んだ理由として、材料、情報、化学という分野を一つの学部で横断して学べる点を挙げます。
一般的な工学系の学部では、それぞれ別の分野として学ぶことも多い中、材料エネルギー学部では複数の知識を組み合わせて学ぶことができます。
現在の研究テーマは、実用鋼における「マイクロクラック(微小き裂)」の発生メカニズム。
材料が破壊する原因の一つとなるマイクロクラックが、どのような場所で、どのように発生するのかを調べています。
講義や実験を通して鉄鋼材料に興味を持ち、実際に材料の組織を観察・分析してみると、教科書だけでは分からない複雑な現象が見えてきました。
「なぜ、この場所からき裂が発生するのか」。
その疑問を自分自身で解き明かしたいという思いが、研究を続ける原動力になっています。
研究室での経験を重ねる中で、学部4年間だけでは、一つの専門分野を十分に掘り下げるには時間が足りないと感じるようになりました。
さらに研究を続け、現象を自分自身で明らかにしたい。
その思いから、大学院への進学を目指しています。
大学院では、材料の組織を制御する技術や、より高度な材料工学を学びながら、未知の問題に粘り強く取り組む力を身につけたいと考えています。

4年間の先で、さらに研究を深める

KさんとTさんの研究対象は、同じ「材料」でも大きく異なります。
Kさんは、コンピュータを使って原子レベルの現象を探る。
Tさんは、実際の鉄鋼材料を観察し、破壊につながる現象を調べています。
アプローチは違っていても、共通しているのは、「もっと知りたい」「自分自身で明らかにしたい」という思いです。
学部で基礎から専門へと学びを進め、研究室で実際の研究に取り組む。その中で生まれた疑問や興味を、大学院でさらに深く掘り下げる。
材料エネルギー研究科は、そうした学びの続きを担う場でもあります。
大学院では、学部で身につけた材料や情報に関する知識を土台に、より高度な専門知識を修得します。
同時に、自分の専門だけに閉じるのではなく、異なる分野の知識や社会とのつながりにも目を向けながら、研究の可能性を広げていく。
「もっと知りたい」から始まった研究を、自分なりの問いへ。そして、その成果を社会へ。
6年間の学びを通して、研究者や技術者としての専門性と、未知の課題に向き合う力を育てていきます。

入学を考えている皆さんへ。材料を学ぶ、その先へ

ここでは、大谷学長、三原学部長、そして学生2人から、これから材料エネルギー学部・研究科への進学を考えている皆さんへメッセージを届けます。

未来の社会を、あなたの「材料」で変えてみませんか――島根大学 大谷学長

スマートフォンや電気自動車、さらには太陽光や風力といったクリーンエネルギー設備から芸術・文化に関わるものまで。現代社会を支えるさまざまな技術の根底には「材料」の研究があります。
材料の性質が変われば、製品の性能が変わり、人々の暮らしや地球の未来も変わっていく。
材料について興味を持ったら、ぜひその可能性を知ってみてください。

これからのものづくりを支える分野へ――三原学部長
 

 

材料は、高校生には少しなじみのない分野かもしれません。
しかし、半導体、電子デバイス、飛行機、自動車、高速鉄道、ロケット、太陽電池など、さまざまな先端技術を支える重要な分野です。
日本の材料関連産業は、世界からも高い評価を受けています。現在、政府が進める重点的な研究分野にも、材料に関わるものが数多くあります。
材料エネルギー学部は発足から4年。そして2027年からは大学院がスタートします。
新しく始まる学部・研究科の歴史を、28人の教員と一緒につくっていきませんか。

材料エネルギー学部(森戸研究室)Tさん

大学は、勉強や研究はもちろん、一人暮らしや趣味、新しい仲間との出会いなど、自分の好きなことに全力で時間を使える自由な場所です!
高校までとは一味違う自由度の高さに、最初は戸惑うかもしれませんが、毎日が本当に充実します。
夢や希望をもってやりたいことにどんどん挑戦して、最高の学生生活を楽しんでください!

材料エネルギー学部(榎木・唐研究室)Kさん

材料系というと実験のイメージが強いかもしれませんが、原子レベルの世界をコンピュータの中で「覗く」ような研究もできます。
地道な積み重ねが、気づけば自分だけのデータや発見につながる分野です。
また、勉強だけではなく、大学生活も楽しいです。私はラクロス部に所属していて、研究と部活のどちらにも打ち込む毎日を送っています。
興味を持ったら、ぜひ材料エネルギー学部のことについて調べてみてほしいです。

材料を学んだ先には、どんな未来がある?

材料エネルギー研究科で身につけた専門性は、研究職や技術職をはじめ、さまざまな分野で生かすことができます。
材料について深く理解し、情報技術を使ってデータを読み解く。
エネルギーや環境、社会が抱える課題にも目を向けながら、新しい技術や製品の可能性を探っていく。
その力は、企業の研究開発や技術開発、製造分野など、幅広い仕事へとつながっていきます。
地域産業においても、材料と情報の知識を生かした技術開発やデジタル化、新たな事業の創出など、活躍の可能性は広がっています。
自動車、航空機、精密機器、電子機器、半導体、発電機器、電池、建築、橋梁・・。全ての工業製品は材料で構成されており、材料の専門家は全てのメーカーから広く求められています。
「材料」という一つの専門から、見える世界はどこまで広がるのか。
大学院で研究を深める2年間は、その答えを自分自身で探していく時間でもあります。

2027年4月、材料エネルギー研究科へ

 

材料を深く知る。
情報科学と融合する。
社会や地域の課題を捉える。
そして、研究成果を社会へつなげる。
材料エネルギー研究科での学びは、材料という専門分野を軸に、これからのものづくりや社会について考えることにつながっています。
学部での4年間で生まれた「もっと知りたい」という思いを、大学院でさらに深めてみませんか。

2027年4月、島根大学に新たな学びの場が始まります。

材料エネルギー研究科 基本情報

 

■設置時期
2027年4月

■課程・専攻
修士課程(2年間)/材料エネルギー専攻

■入学定員
52名

■取得学位
修士(工学)

■学生募集
2026年9月~

※募集要項や最新情報については、島根大学の入試情報および材料エネルギー学部・研究科の公式情報をご確認ください。

材料エネルギー研究科に関する情報(材料エネルギー学部サイト)

ShimaDAYライター
まつD
島根県出身のクリエイティブ・ディレクター。
日々日々映像の世界にダイブしている映画ジャンキーなので慢性的寝不足。
島根を愛し、島根に愛されるオトコを目指して今日も様々なPR案件にチャレンジしている。

ShimaDAYライター
まつD

島根県出身のクリエイティブ・ディレクター。
日々日々映像の世界にダイブしている映画ジャンキーなので慢性的寝不足。
島根を愛し、島根に愛されるオトコを目指して今日も様々なPR案件にチャレンジしている。

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