公開日 2026.04.01

教員・研究者紹介

次世代たたら協創センター 新城 淳史 教授​

宇宙は、もっと近くなる。
島根から、世界とつながる研究を。

2026.4.1

島根大学WEBマガジン
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 世界の研究者たちと協働し、島根から宇宙開発の未来に貢献する。その中心にいるのが、次世代たたら協創センターの新城淳史教授です。飛行機のパイロットになりたい——それが少年時代の夢だったという新城教授。年齢とともに視力が低下したことから、その夢は叶わなくなったものの、それであれば飛行機をつくる側になろうと猛勉強したのが、この道に入ったきっかけだとか。その憧れは、やがて形を変え、ロケットエンジン開発を通して日本の宇宙開発技術の革新に挑む研究者という現在につながっています。

 大学で航空宇宙工学を学んだ新城教授は卒業後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に就職。13年間にわたり、航空機やロケットのエンジン開発に携わりました。その後、より自身の研究を深めていきたいと研究者へと転身。国内外の大学を経て、2018年に島根大学に着任した後に取り組んでいる研究が「金属積層造形の高品質化に向けた造形プロセス最適化シミュレーション」です。航空宇宙や医療などの分野において形状が複雑な部品の製造に有望な方法である金属積層造形(3Dプリンティング)。レーザー光で金属粉末の層の溶融・凝固を繰り返し積み上げて製品を作りますが、繊細な作業の多い金属積層造形では、気泡の混入、不完全な融け残り、割れなどの不具合が生じることがあり、これらの欠陥が、部品の強度を低くし、壊れる原因となります。この原因を探るのに欠かせないのが、高精度数値シミュレーション。「どの研究においても、もちろん実験は行うのですが、実験だけでは不具合や改善点に辿り着けないことも。そこでシミュレーションによって見えない現象を“見える”ようにするのが私の役割です」。

 

 新城教授の研究室では、複雑な現象を高精度に解析することができる数値シミュレーションプログラム「TATM-MEX」を独自に開発。積層造形のプロセスを最適化し、これまで国内外の大学や企業とともに積層造形に関連する現象を明らかにしてきました。昨年冬からは、これまでの研究の成果が評価され「JAXA宇宙戦略基金の国家プロジェクト」に参画。現在は金属積層造形で大型ロケットエンジンの製造に挑戦しています。国内有数の企業と大学が一丸となって、近年国際競争の激しい宇宙開発分野における日本の国際競争力を高めるために尽力しています。
 地方にある大学で、どうしてこれほどの最先端研究が進められるのか——その答えの一つが「デジタル」です。「設計図やシミュレーションデータはすべてデジタル化されているので、世界中どこにいても共同研究が可能です。研究に必要なのは環境と仲間。島根大学では設備が整っているのはもちろん、優れた材料系の研究者も集まっています。孤独になりすぎずに研究に打ち込める環境があるんです」。
 さらには現在、オックスフォード大学、バーミンガム大学、東北大学との共同研究も進行中。「今の時代、研究は地理的な距離に左右されません。だから私は、学生にも“世界は遠くない”と伝えたいんです」。直接、会ったことのない海外の研究者ともオンラインで連携しながら研究を進める。「今はそれが当たり前にできる時代ですから」と微笑む新城教授。「宇宙工学、材料工学、と聞くと難しそうと思う人も多いでしょう。もちろん簡単に答えが出るものではなく、難しいことに取り組むことも多い。だからこそ、“好き”という気持ちが原動力になると思うんです」。年齢を重ねた今も、航空機開発に憧れ、研究に没頭した10~20代の頃と気持ちは全く変わっていないと語ります。
 「あの頃の私のように、やってみたい、という気持ちや興味を持ってくれる若者が1人でも2人でも増えてほしい。そんな気持ちで毎日、研究に取り組んでいます」。世界は遠くない。宇宙も、未来も、ここ島根からつながっている」。そう語る新城教授のまなざしは、今日も少年のようにまっすぐ希望に満ちています。

※本記事は、以前に広報しまだい61号(2025年7月号)で公開された記事をもとに再掲載しています。

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