公開日 2026.04.01

OB・OG

株式会社ナチュラニクス代表取締役 金澤 康樹 さん​

技術 ✕ ビジネスモデルで
世界中に電気を届ける。

  • 総合理工学研究科博士後期課程
  • 2016年修了

島根大学WEBマガジン
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島根大学在学中に立ち上げたスタートアップ企業の代表として、現在も国内外の企業や行政と連携しながら事業を展開している金澤康樹さん。大学での研究を起点として、社会課題の解決へとつなげる事業に取り組んでいます。研究者ではなく経営者という道を選び、研究成果を社会に実装していく道を選んだ金澤さん。その選択の背景には、島根大学で過ごした時間と経験がありました。

目次

「この先生に学びたい」と選んだ進路

金澤さんが、現在の事業にもつながる研究に関心を持ったのは高校時代。自動車産業の盛んな愛知県で生まれ育ったこともあり、自然と自動車の開発に興味を持つようになったといいます。中でも、金澤さんが強く惹かれたのが、電動化が進む自動車を支えるパワーエレクトロニクス。「その第一人者である山本真義准教授(当時)の研究室で学びたい」。その思いから、島根大学への進学を決めました。研究室では、企業との共同研究や実証実験にも早い段階から関わり、研究成果が社会とどのようにつながっていくのかを、実践を通して学んでいきました。単に論文を書くための研究ではなく、実際の現場で使われることを前提に考える。複数の企業や関係者と調整しながら、一つのプロジェクトを前に進めていく。その経験は、学生の立場でありながら研究と社会との距離を具体的に感じる時間でもありました。

 研究に没頭する中で「この結果を社会で役に立つ形にしたい」という思いが湧いてきたという金澤さん。地域に島根大学の研究シーズを社会に活かそうという機運があり、制度や地場の雲州志士会というネットワークが整っていたことも、経営者として社会実装を目指す決意を後押ししたといいます。「広報しまだい」に取り上げられたのは、株式会社ナチュラニクスを設立し、社会実装へのスタートを切った時期でした。学生のうちから企業との共同研究やプロジェクトに関わり、研究の現場と社会の接点を何度も行き来する日々。共同研究先として関わった企業の数は30社を超えました。

社会実装に向けて加速し続ける日々

 株式会社ナチュラニクス設立から10年経った現在も、長寿命で高効率なエネルギー技術の研究開発という事業の軸は当時のまま。企業や行政と連携して実証実験を重ね、社会に導入するための仕組みづくりに取り組んできました。これまでに、日本製リチウムイオン電池をベースにしたバッテリーパックや充電器を独自に開発してきたナチュラニクス。現在は、大手企業との協業のもと、電動バイクタクシー向けのバッテリーサブスクリプションサービスの実証実験に取り組んでいます。

 2024年には、タイ・バンコクにおいて、電動バイクタクシーのドライバーを対象としたバッテリーサービスの実証実験を実施。高温多湿という気候条件や現地の利用実態を踏まえながら、サービスとしての使い勝手についての検証を進めてきました。さらに2025年12月からは、対象となる台数やエリアを拡大し、サービス提供のあり方も視野に入れた本格的な実証段階へ。実運用に近い形での検証を重ねながら、バッテリーサービスが事業として成立しうるかどうかを見極めるフェーズに入っています。

 

 ナチュラニクスが目指すのは、単なる電池技術の提供ではなく、AIによる使用・劣化状況解析や、ユーザーの利用データに基づく最適化であり、製品の長期利用・循環型利用(リユース・リパーパス)を前提とした新たなビジネスモデルの実現でもあります。これらは、環境負荷の軽減や持続可能なモビリティ社会の構築といった社会課題に向き合う取り組みとしても注目されています。「学生時代に企業や多様な立場の人と協働した経験が事業の土台。今も変わらず、実際に社会の中で活かされるものづくりがしたいという思いで経営を続けています」と話す金澤さん。島根大学で始まった学びは、研究室の外へ飛び出し、多くの企業とつながり、そして世界へと広がり続けています。

※本記事は、以前に広報しまだい63号(2026年4月号)で公開された記事をもとに再掲載しています。

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