公開日 2026.04.01

ツナガルシマダイ

特別対談「島根大学と島根県立大学」​

島根県立大学との連携で
島根の未来を創る

  • 島根県立大学 学長 山下 一也 ✕ 島根大学 学長 大谷 浩

島根大学WEBマガジン
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 本学では、「へるん入試」や「クロス教育」など独自の取組を展開しています。自ら課題を見つけて入学し、領域を越えた学びにより多角的な視点やスキルをもって地域課題解決へと導く人材の育成を行う島根大学。今後、島根県の課題を解決して島根創生につなげるため、島根県立大学との連携を強め、大学の枠を超えてさらなる高度人材の輩出を目指しています。まずは人口減少に直結する深刻な助産師不足問題に共に取り組むことなどについて、島根県立大学 山下一也学長と大谷学長による対談形式で思いを聞きました。

目次

地域課題解決への第一歩は出生率を上げること

大谷 島根県は「課題先進地域」とも呼ばれ、人口減少、高齢化、人手不足による産業の停滞など、地域の持続可能性への懸念が年々高まっています。
山下 「18歳人口の減少」が今後10年ほどでさらに加速することは、データからも明らかで、人口減少に伴う医療、看護、保育士の人手不足と地域偏在の問題も深刻です。
大谷 地域にとって大学の事案は教育分野の話だと捉えられがちですが、実際は人材育成と少子化対策の問題に直結します。質の高い教育を提供し、地域社会の持続的な発展と創生に貢献できる人材を育成することが、我々大学の使命でもあります。

山下 各大学が個々で取り組むことももちろん大切ですが、自らの強みや特色を活かしながら大学間の連携をより強固にすることを国も求めています。そこで島根大学と島根県立大学それぞれの人的・物的リソースを掛け合わせ、自大学のみでは成しえない教育活動を行うことになりました。
大谷 私と山下先生は、かつて島根医科大学で切磋琢磨した仲で、これまでも連携関係自体はあったんですよね。島根県立大学の講義に本学医学部の先生が参加したり、私も解剖学の授業を長い間務めさせていただいたりしました。今後さらに連携を強化するにあたり、まずは解決優先度が高い助産師問題に共に取り組みたいと思っています。

山下 これも急に思いついたわけではなく、随分前から連携の構想はあったんですが、なかなか実行に移せていませんでした。
大谷 人口が減少する大きな原因の一つが、子どもが生まれないということ。本当に安心して子どもを産み、育てられる環境が整わない限りは少子化問題を根本解決できません。島根県が抱える課題の多くは「人口減少が地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させる」という負のスパイラルから発生したもの。発端である人口減少を抑制するカギは、出生率の向上です。それなのに、助産師が圧倒的に足りていない。医学部附属病院の病院長からも「危機的な状況にあり、中長期的視野を持ちながら早急に対応すべき問題」と意見をもらっています。
山下 都会の助産師教育の現場を視察すると、頻繁にグループディスカッションを行い、医療の現場に必要不可欠な問題解決能力、コミュニケーション能力、そして観察力を養う環境を作っていることがわかります。連携を通じて共に学ぶ人数が増えることでディスカッションの活発化が期待できますし、お互いの講義を受講したり、合同で解剖見学をしたりするなかで、学生には新たな視点を身に付けてほしいです。また近年、助産師は産後のメンタルケアなど、新しく身に付けなければならない知識・能力が増えています。それぞれの大学の先生方の得意分野を活かし、より高度な講義を学生に提供したいですね。両大学で人も物もある程度シェアしながら、島根県の助産師不足に貢献できる人材の輩出を目指しましょう。

新たな在宅医療の形を構築し、医療格差をなくしたい

山下 医療分野での提携は、ほかにも構想しています。現在、山間部や離島は医療アクセスが困難な傾向に陥っており、住民が医療サービスを享受できる機会が減少しています。この地域課題の解決に向け、医療MaaS(マース)という新たな方法を模索中です。
大谷 医療MaaSとは、通信機器や医療機器を搭載した車輛が患者の自宅を訪問し、同乗している看護師が患者をサポート。病院にいる医師とオンラインで繋ぎ、診療を提供するサービスのことですね。
山下 そうです。看護師が直接訪問することで単なる遠隔医療ではなく、患者に寄り添えるシステムを構築できるところが特長。今ちょうど出雲市と実証実験中なのですが、これがうまくいけば、中山間地域や海岸線沿いの医療アクセスが困難な場所に住んでいる人も、そのままそこに住み続けられるようになります。遠隔医療によって難病にも対応した高度な先進医療の提供にも取り組んでおられる島根大学医学部と協力して、新しい在宅医療の形を共に作り上げたいです。
大谷 過疎化が進み、地方に住んでいる人たちは、どんどん街の方へ集まりなさいと言われていますよね。そのことに対する、ひとつの解決策になりそうです。自分のふるさとに住み続けられるのは幸せなことですから、早急に社会実装したいですね。

グローバル化を進めることは島根県の産業発展にも寄与する

山下 島根県でも外国の方が増えていらっしゃるので、多文化共生をしっかりと社会に実装していかなければならないと感じています。本学では地域に根差して世界と繋がれる「グローカルな人材」の輩出を全学科で掲げており、多角的な視点で解決策を見出し、地域の発展に貢献できる人材の育成を進めています。そのため、世界各国への留学制度や研修制度が充実。安心・安全・安価なプログラムが揃っているところも自慢です。
大谷 島根県立大学が主催しているアメリカ語学研修に本学の学生も応募できるようになっていて、毎年とても好評なんですよね。
山下 そうなんですよ。本学の留学・研修制度は、外国語によるコミュニケーション能力向上だけでなく、異文化への理解力を培い、視野を広げることを目的としたプログラムとなっています。島根県に新たな視点やスキルをもたらし、イノベーションを促進する一助を担ってほしいです。

大谷 本学も交換留学や海外研修制度を充実させていますが、島根県立大学とは違うプログラムですので、共有したり、強みを分け合ったりしたいですね。本学が近年注力しているのは、インドとの関係強化。インド工科大学のハイデラバード校と学術交流協定を締結し、インド工科大学の学生、そして地元企業とのネットワークを構築する道が拓けました。インドは産学連携によるITや製造業が盛んな巨大国家ですので、このネットワークを活用して、本学の学生の起業意欲を引き出し、また島根県の企業が海外進出する際のお手伝いができると考えているんです。島根県立大学には、経済学・経営学を学ぶ地域政策学部がありますから、ぜひそことも連携をして、島根県の産業発展に繋げたいです。

連携強化をきっかけに若者の県外流出を食い止めたい

山下 高度な教育が提供できるようになることで、保護者の皆さんや学生さんに「島根県でも、しっかりと勉強できるんだ」「県外じゃなくて県内に進学させたい・したい」と思ってもらえたら嬉しいですよね。両大学の連携強化が、若者の県外流出を防ぐ一翼となることを願っています。島根県が抱えている課題は、学生にとって最高の学びの題材になると思うんですよ。本学も島根大学も、地域に出向き、そして地域の人と協働して課題解決をする実践型教育の機会を豊富に用意していますから、ぜひその中に飛び込んでほしいです。
大谷 県全域に文化が根付き、歴史的に優れたものがたくさんある島根県は、本当に恵まれた環境だと思います。しかも地域や自治体が、学生の活動に対して非常に協力的。日本中を見渡しても、そんなところはなかなかありません。NHKで朝ドラ『ばけばけ』の放送が始まりましたが、小泉八雲さんは1年3ヶ月しか島根県にいなかったのに、人の良さにすっかり魅了されたといいます。当時から、島根県の人々には心の豊かさや、お互いに助け合う精神があったのでしょう。そしてそれが、今も根付いているのだろうと思います。学生にはぜひ、豊かな自然や文化、歴史の中でしっかりと地に足をつけた、持続可能な生き方について考えを巡らせてほしい。そして島根県が抱える課題解決に貢献してほしいです。
山下 そのためにもまずは我々が、高度な教育を提供しなければなりませんね。一校では届かないところも、二校で力を合わせれば届くはず。これを機会にさらに高みを目指しましょう!大谷先生、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
大谷 こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

撮影協力:出雲文化伝承館

※本記事は、以前に広報しまだい62号(2025年12月号)で公開された記事をもとに再掲載しています。

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