公開日 2026.04.01

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「日本学術振興会 育志賞」受賞報告会レポート​

本学初の栄誉!
自然科学研究科 門田 宏太さんが「日本学術振興会 育志賞」を受賞

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 本学大学院自然科学研究科の門田宏太さんが、第 16 回日本学術振興会「育志賞」を受賞し、本学大谷学長へ受賞の報告を行いました。育志賞は、上皇陛下の天皇即位20年に際し、若手研究者を支援するために平成22年度に創設された賞で、将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な博士後期課程学生を顕彰するもので、若手研究者にとって最高峰の賞の一つです。全国187名の推薦応募者から受賞者はわずか19名という中で、その19名のうちの1名に選ばれるという本学としては初めてとなる快挙です。
 はじめに、育志賞を受賞された門田さんより大谷学長へ受賞の報告を行いました。
 授賞式は3月3日(火)に日本学士院にて秋篠宮皇嗣同妃両殿下ご臨席のもと執り行われ、まずはこのような賞を受賞できたことへの喜びと、大変光栄に思っているとの言葉の後に、島根大学の代表として育志賞の候補者へ推薦された大谷学長、同じく推薦された指導教員である本学総合科学研究支援センターの蜂谷卓士准教授ならびに名古屋大学大学院生命農学研究科の榊原均教授に深い感謝を述べられました。また門田さんの研究を支えられた学内外問わず多くの研究者の皆様や、門田さんの研究活動を継続して応援いただいたご両親にも感謝の言葉を述べられました。

 門田さんの研究内容の紹介では、「植物は根と地上部という全く異なる環境の情報を受け取る2つの器官から成り立っており、動くことのできない植物は、日々変動する環境に適応するため、同じ遺伝子であっても根と地上部において異なる役割を果たすことがある。こうした器官特異的な遺伝子機能は、植物が過酷な環境を生き延びるためには非常に重要になるが、研究者にとっては、遺伝子機能を正確に理解することやその応用として植物の持つ潜在能力を人為的に高めることを難しくしている要素でもある。こうした課題を解決するため、私は接ぎ木という平安時代からある古典的な技術に着目した。」との導入から、テーマを「接ぎ木の活用による器官特異的な遺伝子機能の解明と応用」とし、高度な接ぎ木技術を用い、「根だけ」「地上部だけ」といった器官ごとの遺伝子機能を調べることに成功し、また植物の「根」と「地上部」では、同じ遺伝子でも働き方が異なることを発見しました。成果としては、栄養が少ない環境でも成長できる省エネ型植物を作りだしたこと、種子が取れない変異株の種子生産を成功させたこと、どの器官の遺伝子が成長や栄養応答に影響しているかを区別することができたこと等が挙げられます。

 門田さんの接ぎ木技術について、植物分野では一般的に接ぎ木というのは習得が難しい技術の一つとして知られていますが、門田さんは今や成功率が100%という国内外でも極めてまれなレベルにまで達しています。主な研究対象はアブラナ科のシロイヌナズナで、播種後5日目の微小な芽生えを顕微鏡下で接ぎます。作業はすべて無菌環境で行い、4~5時間もの高い集中力を求められる精緻な作業は、門田さんにしか成し遂げられなかったであろう偉業とも言えます。

 門田さんはこの接ぎ木技術により、100種類以上のシロイヌナズナ野生系統の遺伝的作用の違いを器官特異的に比較することに成功し、野生系統の生長多様性が、根の遺伝的作用の違いによって引き起こされる可能性を見出しています。今後は、こうした研究をさらに発展させることで、これまで解析が困難であった植物の長距離移行性分子とその制御遺伝子を探索することを計画されており、門田さんの接ぎ木の技術と最先端の解析手法を組み合わせることで、特定の研究分野に依存しない幅広い知識の創出と作物応用につながるような研究を推進できる研究者になれるよう、引き続き研究に尽力したいと考えているとのことです。

  次に大谷学長より門田さんの受賞報告を受けて、「育志賞の187名の推薦に入るという時点でかなり絞られているにも関わらず、選考に半年をかけた上で選ばれたわずか19名の中のお一人ということで、改めて感銘を受けた。」「門田さんの研究は、技術とアイデアを結びつけたとてもユニークな研究であり、かつ学問領域として広がる可能性を秘めている分野を先導されたという意味でも大変すばらしい。」「この分野の発展領域を開拓するという意味で、後進にもつないでいただきながら、リーダーとしても活躍を願っている。」とお祝いの言葉が贈られました。

 次に自然科学研究科上野研究科長より、この度の受賞を受けての講評として、「このたび門田さんが育志賞という大変名誉ある賞を受賞されたということ、自然科学研究科長として大変嬉しく思っている。若手研究者にとっては最高峰の賞の受賞であり、本学としては初の受賞でもある。極めて大きな快挙だと考えている。」「門田さんの研究は新たな農業や基礎科学の道を拓く可能性を持つ研究として高く評価されており、微細で高度な技術を伴う実験というのを自ら改良しながら積み重ねてきた点、現象の背景のメカニズムを粘り強く追究してきた研究姿勢や、研究成果をすぐに論文として発信してきた、そういう実績が今回認められて、賞につながったと考えている。」「地方大学でいろいろな研究環境が厳しいところもあると思うが、地方大学からでも世界レベルの研究が可能だということを門田さんが身をもって証明してくださり、後輩にも大きな励みになると思う。」と述べられました。

 その後、記念撮影を行い、集まった報道陣の質問に丁寧に回答を行いました。門田さんはこの研究が今後、物価高で肥料の高騰に悩まされる農業分野において、少ない肥料でも良好な生産性を示す作物の創出に応用できないか、また植物の窒素応答を統御する長距離移行性分子とその制御遺伝子発見がほかの作物でも同じように作用するのであれば、食用の作物にも応用できる可能性があると語りました。
 春からは日本学術振興会特別研究員PDとして岡山大学へ研究拠点を移し、引き続き本研究を極めると前を向かれる門田さんを、本学としましても引き続き見守り、応援していきます。

ShimaDAYライター
あいほの
鳥取県米子市出身。島根大学企画広報課職員。
昔から大の生き物、動物、自然好き。休日は子供と虫を捕まえて観察したり、家族の反対を押し切り作った家庭菜園スペースで園芸を楽しんでいる。天気が良いとご機嫌な雨女。双子育児に奮闘中!

ShimaDAYライター
あいほの

鳥取県米子市出身。島根大学企画広報課職員。昔から大の生き物、動物、自然好き。休日は子供と虫を捕まえて観察したり、家族の反対を押し切り作った家庭菜園スペースで園芸を楽しんでいる。天気が良いとご機嫌な雨女。双子育児に奮闘中!

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