公開日 2026.05.11
「日本建築学会賞(論文)」受賞報告会レポート

快挙!建築界最高峰学術賞
総合理工学部 細田智久教授が「建築学会賞(論文)」を受賞
島根大学WEBマガジン
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本学総合理工学部 細田智久教授がこのほど2026年日本建築学会賞(論文)を受賞され、松江キャンパスにて大谷学長へ受賞の報告を行いました。日本建築学会賞は、建築分野における国内最高峰の学術賞であり、分野を代表する研究者による長年の研究蓄積を対象とする極めて狭き門の賞です。本学教員による同賞の受賞は初めてとなります。
この日は、細田教授をはじめ、大谷学長、亀井淳志総合理工学部長らが出席し、研究内容の報告の後、報道機関との質疑応答が行われました。
報告会の冒頭で、細田教授は受賞研究の概要について説明しました。受賞対象となった研究は、「山陰地方の山間地域自治体を中心とする公共公益施設と学校施設の整備再編に関する研究」で、15年以上にわたり発表してきた20編の学術論文を、一連の研究としてまとめたものです。少子高齢化と人口減少が進む山間地域において、自治体が公共施設や学校施設をどのように再編し、地域の暮らしを維持してきたのかを、人口動態、行財政データ、施設配置、住民への聞き取り調査などを組み合わせて体系的に明らかにしました。特に、鳥取県日南町をはじめ、雲南市、奥出雲町など複数自治体を長期にわたって比較分析し、それぞれ異なる再編のあり方が地域の特性に応じて機能していることを示した点が高く評価されました。
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受賞の報告を行う細田智久教授 -


研究テーマをこの分野に据えた理由については、自身の経験を踏まえて語りました。「愛知県で研究・教育に携わっていた頃は、社会全体が成長していく感覚が強かった。しかし山陰に戻ってきたとき、すでに統廃合が進んでいて、全く違う現実があった。これはもう、このテーマをやるしかないと思いました」。出身地である安来市を含む山陰地方が、人口減少社会の最前線にあることを強く意識したことが、研究の原点だったと振り返りました。「静かに縮退が進む地域だからこそ、将来の日本社会の姿を先取りして考えることができる調査地だった」。研究成果は、実際の自治体計画にも反映され、社会実装につながっている点も評価の対象となりました。

続いて、大谷浩学長が祝辞を述べました。人口減少や少子高齢化といった社会課題に対し、分野を横断した総合的な研究が不可欠であるとした上で、「人文社会科学的視点と建築学の両方をカバーした本研究は、総合大学だからこそ成し得た成果であり、本学を代表するモデル研究である」と、その意義を強調しました。また、縮小しながらも機能を維持する「縮充」という考え方に触れ、本研究が地域の希望を示す内容であることに深い共感を示しました。

次に総合理工学部亀井淳志学部長より、この度の受賞を受けての講評として「長年にわたる緻密なフィールドワークとデータ蓄積により、山間地域研究の新たな道を切り拓いたパイオニア的研究である」と評価し、学部としても大きな誇りであると述べました。さらに、教育・学部運営にも尽力してきた細田教授の姿勢に敬意を表しました。
当初は学校建築など個別の公共建築を対象とした研究が専門だったという細田教授。研究を続けるうちに、学校だけでは足りないと感じるようになったそうで「今は、住宅を除く地域の公共的な建物すべてをどう考えるか。診療所、役場、福祉施設など、地域にある建物全体をどう再編すれば、コミュニティを維持できるのかというところに、自分の関心は向かっています」と、研究の広がりを説明しました。
質疑応答で受賞の率直な感想について問われた細田教授は、「学会で受賞されてきた先生方は、特定の建物や分野を深く掘り下げてきた方が多く、その背中がずっと眩しかった」と述べ、「『建てる』ための研究ではなく、人口減少に合わせて『畳み、最適化する』研究で、同じ場所に並べるとは、数年前まで思ってもいなかった」と語りました。初めての応募での受賞については、「結果を知ったときは本当に飛び上がるほど嬉しかった。娘と車に乗っていたときに連絡が来て、『お父さんすごいよ』と言われたのが印象に残っています」と、この日一番の笑顔になり、当時の興奮と喜びを話しました。
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日南町で学生たちと共に調査を行う様子 -

研究内容を簡潔に表現するとどういう研究か、という質問に対しては、「これから都市近郊でも進む人口減少の中で、いつまで何の施設を残すのか、どの段階で集約に踏み出すのか、その前に地域を支えるためにどんな手立てが必要かを、関係者が一緒に考えるための材料を整理した研究です」とし、「集約する側と、残そうとする側、その両方が議論できる共通の土台をつくりたかった」と語りました。また、研究を進める中での実感については、「建築は実学で、社会と切り離せない分野です。自治体の委員会に入り、時には委員長として関わりながら調査を続けてきたことで、町や自治会が何を考えているのかを肌で感じることができた」と振り返りました。「研究と社会が一体となって進められ、役場の方々にも支えてもらいながら取り組めたことは、とても大きかった」と感謝し、調査対象地の人々と深く関わりながら研究を進める長年の関係づくりもまた重要だったのではないかとうかがえました。

今後の研究については、「この研究は終わりがない」と語り、「日南町を調べ、次に数年間奥出雲町を見ていると、その数年の間にまた日南町で新しい動きが出てくる。今は雲南市に学生と一緒に(調査に)入っていますが、行き来するたびに新しい発見がある」と説明しました。「これからも地域に入り、建物の再編やリノベーション、まちづくりに学生と一緒に関わっていきたい」と、今後の抱負を述べました。
学校再編に関する質問では、「地域が努力して学校を守ることは理想的だ」と前置きしつつも、「一定の段階まで子どもが減ると、保護者は送迎してでも大きな学校へ通わせるようになる」という実感を語りました。「学校が残れば子育て世代が戻ってくると思われがちですが、あまりに小規模な学校には戻ってこない。むしろ統合して、安全に通える環境を整えた方が戻るケースもある」と述べ、「限界点を見極め、早めに判断することが、子どもにとっても保護者にとっても良い結果につながる」との考えを示しました。調査対象とした日南町、奥出雲町、雲南市については、「どれが正解ということではない」と強調しました。「平成の市町村合併の経緯や歴史的背景によって、取れる選択肢は違う。多様なやり方があること自体を示したかった」と述べました。その中で日南町については、「小学校統合から15年後の状況まで追えている先行事例として、評価できるケース」と説明しました。
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奥出雲町でのフィールドワークの様子
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雲南市でのフィールドワークの様子
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受賞した細田教授を囲んで
最後に大谷浩学長は改めて、人口減少という課題先進地域に立地する大学として、データに基づいた研究を通じて全国や世界に示せるモデルをつくる重要性を強調し、細田教授の研究は、「大学だからこそできる研究」として、その先進性が学会に認められたものであり、今後は総合大学の強みを生かして分野横断的な連携をさらに進めてほしいと期待を寄せました。
受賞報告会は、細田教授自身の言葉を通じて研究の歩みと意味が共有されるとともに、島根大学が果たすべき役割を改めて考える機会となりました。
ShimaDAYライター 島根県松江市出身。島根大学企画広報課職員。とりあえず笑顔,がモットー。五星三心占いは「金の羅針盤」。爆音で音楽を聴き続けたせいで最近聞き返すことが多い。ライブ遠征と猫が好き。
はやこと島根県松江市出身。島根大学企画広報課職員。
とりあえず笑顔、がモットー。五星三心占いは「金の羅針盤」。
長年爆音で音楽を聴き続けたせいで最近少し聞こえに不安が・・・。ライブ遠征と猫が好き。
はやこと







