公開日 2026.07.10

ツナガルシマダイ

島根電工株式会社​

学生の可能性を信じて
島根大学と歩む、島根電工の人材育成

  • 島根電工株式会社
  • 代表取締役社長 野津 廣󠄁一氏
    (写真は島根電工で活躍する若手社員の方と)

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「学生にはもっと外へ出てほしい。」
取材を通して、島根電工株式会社代表取締役社長・野津廣󠄁一氏が何度も口にした言葉です。
その背景には、学生一人ひとりが多様な人や価値観と出会い、自らの可能性に気づいてほしいという思いがあります。
島根大学との産学連携を通して見えてきた、人を育て、地域の未来をつくるための企業の役割について伺いました。

※記事中に登場する「株式会社ストラテジーAI」は、現在「日本AI開発センター株式会社」に社名変更されています。本記事では、当時の名称である「株式会社ストラテジーAI」と表記しています。

目次

「島根に残る」を前向きな選択肢に

「島根には、若者に残ってほしいと本気で考えている企業があることを知ってほしい。」

野津社長が最初に語ったのは、「県内定着奨学金」への思いでした。
島根電工は2021年、島根大学、TSKグループ、株式会社オネストとともに連携協定を締結し、「県内定着奨学金」を創設しました。卒業後に県内での就職を希望する学生へ就職活動準備金や定着準備金を支給し、県内定着を後押しする制度です。

しかし、野津社長は、この制度は経済的な支援だけを目的としたものではないと話します。
県内には、若い世代に地域へ残ってほしいと本気で考えている企業があることを知ってほしい。そして、島根電工へ入社することだけではなく、「島根で働く」という選択肢そのものを前向きに考えてもらいたい。その思いを制度に込めたといいます。

野津社長は、人材育成についても「地域を背負うリーダーを育てる」だけではないと考えています。
若い世代は、まだ自分がどこで暮らし、どこで働くのかを模索している段階です。都会へ出ることだけが正解ではなく、地元で働き、地域に貢献することも、自分らしい人生を築く一つの選択肢です。大切なのは、それぞれが自分自身で考え、自分の意思で進路を選ぶことだと話します。

「島根を引っ張る人材はもちろん必要です。ただ、一度県外へ出て経験を積み、島根へ戻ってくるという形でもいいと思っています。」

野津社長は、「島根で働く」という選択肢を前向きに考えてもらいたいと語りました。


島根電工グループ、TSKグループ及び株式会社オネスト並びに国立大学法人島根大学の連携協力に関する県内定着奨学金協定締結式

「教える」のではなく、「気づく機会」をつくる

2025年、島根大学では「TOP TALK 島根電工×ストラテジーAI」が開催されました。島根電工の野津社長と、島根大学発ベンチャー・株式会社ストラテジーAI代表の中尾香達さんが登壇し、「挑戦する姿勢」や「厳しい環境へ飛び込むことの大切さ」をテーマに学生へ語りかけました。

「本学の教養教育科目「アントレプレナーシップ入門セミナー」(担当:地域未来協創本部 服部大輔准教授、オープンイノベーション推進本部 辻本和敬 准教授)の一環として開催

TOP TALKで学生と向き合う中で、野津社長の印象に残ったことがありました。
多くの学生が後ろの席から座り、質疑応答でもなかなか手が挙がらなかったといいます。

「もちろん、それだけで学生を評価するつもりはありません。ただ、もっと自分から一歩踏み出してほしい」
そう率直に振り返ります。

講演では、島根電工が大切にしている「自鳴(じめい)」という考え方を紹介されました。自ら手を挙げ、自分の意思で挑戦することを大切にする企業理念です。

やらされて取り組むことと、自分で決めて挑戦することでは、得られる経験も成長も大きく違う。学生時代に勇気を出して手を挙げた経験が、自身の人生の大きな財産になったことも交えながら、学生へ語りかけました。

一方で、「前へ座りなさい」「もっと質問しなさい」と教えるだけでは、人は変わらないとも話します。

「人は教えられて変わるものではありません。自分で気づいた時に初めて変わるんです。だからこそ、学生には教室の外へ出て、多様な人と出会ってほしいと考えています。」

企業の経営者や地域で働く人、異なる世代の人たちと接することで、自分の価値観が広がり、新たな気づきが生まれる。そうした経験が学生にとって大切だと話します。

この考えは、学生食堂「島根電工ソーニョ」のネーミングライツ取得にもつながっています。
企業名を知ってもらうことだけが目的ではありません。社員が学生食堂を利用する機会が増えたことで、学生と社員が同じ空間で食事をする場面も生まれました。何気ない会話や挨拶が、新しい交流のきっかけになることも期待しています。

島根大学学生食堂ネーミングライツ2号『島根電工ソーニョ』のオープニングセレモニー

学生と企業が自然につながる場をつくること。それもまた、野津社長が考える「気づく機会」の一つなのです。

「応援」ではなく、「共に挑戦する」

島根大学発ベンチャー・株式会社ストラテジーAIとの連携も、野津社長の考え方を象徴する取り組みの一つです。
きっかけは、当時学生だった中尾香達さんが島根電工を飛び込みで訪れたことでした。
社員から話を聞いた野津社長は、「それなら一度プレゼンをしてもらおう」と考えました。
実際にプレゼンを聞き、その内容を高く評価しました。

「期待しかなかったですね。」

その後、社内研修などを依頼したことをきっかけに、ストラテジーAIとの連携が始まりました。

学生という立場ではなく、提案内容そのものを評価したことが、連携につながりました。
その後、中尾さんから活動拠点について相談を受け、本社オフィスの一室を提供することになりました。
野津社長は、交流から新しい研究やビジネスが生まれる可能性にも期待を寄せています。

自らの経験が、学生への思いにつながる

 

野津社長自身も、かつては一人の学生でした。
大阪大学大学院では核融合に関する研究に取り組み、教授からは研究機関への進路も勧められていたといいます。
研究者として歩む道もありましたが、将来について考える中で地元・島根へ戻ることを決意しました。

「研究者の道にも魅力を感じていました。でも、自分が本当に歩みたい人生なのかを考えた時、島根へ帰ろうと思ったんです。」

自身の経験を振り返りながら、学生時代は人生の選択肢が最も多い時期だからこそ、さまざまな経験をしてほしいと話しました。

技術者を育てることが、地域の未来につながる

野津社長は、理工系人材の育成についても思いを語りました。
島根大学と連携して実施している「未来技術者育成奨学金」も、その取り組みの一つです。

野津社長は、研究者や技術者は社会を支える大切な存在でありながら、その価値が十分に伝わっていないと感じていると話します。
工業高校や高専の卒業生が少なくなっていく一方で、大学進学率は高まっており、進学を機に県外へ流出する若者が増えているため、地元で就職する人材は減少してきています。18歳人口も減少する中で、理工系人材の確保は地域全体の課題となっています。
そのため現在、島根電工では次世代技術者育成の新たな拠点「みらい共創 -自鳴- ラボ」の整備を進めており、業界全体に貢献したいと話します。

「みんなでやりましょうというだけでは限界があります。それぞれの企業が、自分たちに何ができるのかを考えなければいけません。」

社員教育だけでなく、業界全体の人材育成にもつながる施設を目指していると話します。
また、「そこで学んだ人が、最終的に別の会社へ行ったとしてもいいんです」と話す野津社長。

さらに、島根大学との連携を通して、留学生との交流にも期待を寄せています。
実際に、インドから島根大学へ留学していた学生が島根電工でインターンシップを経験し、 「島根電工で働きたい」と話してくれたことが印象に残っているそうです。

「交流が生まれることで、お互いを知ることができます。そこから新しい研究や新しいビジネスが生まれる可能性もあると思っています。」

学生へ伝えたいこと

 

取材の最後、野津社長に学生へのメッセージを伺いました。

「もし自分が学生時代へ戻れるなら、やりたいことはまだまだたくさんあります。」

そう話した野津社長は、勉強だけでなく、部活動やアルバイト、旅行、人との出会いなど、学生時代にしかできないさまざまな経験をしてほしいと語りました。

「学生時代というのは、一度しかありません。社会人になってから振り返ると、その時間がどれだけ貴重だったかが分かります。」

そして最後に、取材を通して何度も語ってきた言葉を、改めて学生へ送りました。

「人は教えられて変わるものではありません。変わるのは、自分自身が気づいた時です。だから企業としてできるのは、その『気づく機会』をつくることなんです。」


PROFILE
野津 廣󠄁一(のつ・ひろかず)氏
島根電工株式会社代表取締役社長。
大阪大学大学院修了。2023年に代表取締役社長へ就任。
島根大学との産学連携や人材育成、地域活性化に積極的に取り組み、「県内定着奨学金」や「未来技術者育成奨学金」の創設、学生食堂「島根電工ソーニョ」のネーミングライツ取得など、学生と地域企業をつなぐ取り組みを推進している。

ShimaDAYライター
りなぴィ
島根県松江市のデザイン会社勤務。
趣味はドライブと散歩。天気のいい日はいい景色や美味しいもの、ご当地ソフトクリームを求めて出かけることも。散歩中に市内の新しいお店や景色を見つけるのが楽しみ。

ShimaDAYライター
りなぴィ

島根県松江市のデザイン会社勤務。趣味はドライブと散歩。天気のいい日はいい景色や美味しいもの、ご当地ソフトクリームを求めて出かけることも。散歩中に市内の新しいお店や景色を見つけるのが楽しみ。

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