公開日 2026.08.17
特別鼎談「島根大学と大学発ベンチャー」

「やってみたい」が、未来の一歩になる。
学生起業家と学長が語る、挑戦を後押しする島根大学
島根大学WEBマガジン
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何かを「やってみたい」「挑戦したい」という気持ちは、どこから生まれるのでしょうか。
そして、その一歩を踏み出し続けるためには、何が必要なのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、島根大学発ベンチャーとして活躍する日本AI開発センター株式会社代表取締役の中尾香達さん、株式会社ゲームガムCEOの黒田隆史さん、そして大谷浩学長です。
大学で学びながら起業を志したきっかけは中尾さん、黒田さん、二人それぞれ異なります。
海外での経験、人との出会い、自分自身と向き合った時間やその歩みは決して同じではありません。しかし、その挑戦の背景には、「やってみたい」という思いを後押ししてくれる環境と、多くの人とのつながりがありました。
学生起業家と学長による鼎談から見えてきたのは、起業という選択肢に限らず、一人ひとりの挑戦を後押しする島根大学の姿でした。
目次
「インドでの経験が、起業への一歩につながった」

起業のきっかけは、インドでの経験。
そう話すのは、日本AI開発センター株式会社代表取締役の中尾さんです。
大学3年生だった2023年、中尾さんは休学し、貯金約30万円を持ってインドへ向かいました。「そのお金で3か月暮らせる国」を探した結果、たどり着いたのがインドだったといいます。
現地では約1か月かけて各地を巡り、その後は短期インターンにも参加しました。しかし、旅は決して順調だったわけではありません。スーパーで店内に閉じ込められたり、見知らぬ人に現金を要求されたりと、危険な出来事も経験しました。
また、渡航先を家族に伝えていなかったため、偶然の電話でインドにいることを知られ、心配した家族が急いで帰国便を手配した、というドタバタの帰国劇も…。
そんな経験以上に中尾さんの心に残ったのは、現地で出会った人たちの姿でした。
生活のため、家族のため、将来のために懸命に働く人たちを目の当たりにし、自分自身の価値観が大きく変わったと振り返ります。
帰国後、「このままではいけない」と考えた中尾さんは、わずか1か月後に会社を設立しました。
当時は事業内容も決まっておらず、会社の設立方法も分からない状態でした。それでも、先輩起業家である黒田さんへ相談しながら、一つずつ準備を進め、会社を立ち上げていきます。
中尾さんは、海外で異なる文化や価値観に触れたことが、自分にとって大きな転機になったと話します。これまで当たり前だと思っていた環境を見つめ直し、「挑戦してみよう」という気持ちが自然と芽生えたそうです。

この話を受け、大谷学長は「島根大学には高いポテンシャルを持った学生がたくさんいる」と語ります。
学生に必要なのは能力だけではなく、その力を発揮するきっかけです。中尾さんにとって、そのきっかけがインドでの経験だったのでしょう。
現在、島根大学ではインド工科大学ハイデラバード校との交流も進めています。海外で異なる文化や価値観に触れる経験も、学生が新しい一歩を踏み出すきっかけの一つとして期待されています。
異なる環境へ飛び込み、新しい価値観に触れた経験が、自分の可能性を広げる大きな力になることが伝わってきました。
失恋も、筋トレも、研究も。すべてが今につながっている

「僕はそんなに面白い話じゃないんですけど……。」
そう前置きした黒田さんが続けたのは、「きっかけは、失恋です。」という意外な一言でした。
大学3年生の頃、大きな失恋を経験し、何をするにも気力が湧かない日々が続いたといいます。そんな自分を変えようと、本気で取り組んだのが「研究」と「筋力トレーニング」でした。
研究では、「一番厳しい研究室に入る」と決意します。
コロナ禍で学生の出入りが制限されていた時期でしたが、自ら研究室を訪ね歩き、自分が最も成長できる環境を探しました。
研究に打ち込む中で、自分は研究を続けるよりも、その成果を社会へ届け、人の反応を近くで感じられる仕事に魅力を感じていることに気づきました。
「人の笑顔が近くで見える仕事がしたい。」その思いは、現在のゲーム開発や事業づくりにもつながっています。
一方、筋力トレーニングでも目標を決め、地道に努力を積み重ねました。
当時65kgだったベンチプレスは、およそ11か月で100kgに到達。すぐに成果が出なくても、努力を続ければ必ず成長できる。その経験は、自分への大きな自信になったと振り返ります。
大学生活の後半になると、松江市内で開かれる起業家や経営者の集まりにも積極的に参加するようになりました。
飲食店でアルバイトをしながら地域の経営者と交流し、「こんな働き方があるんだ」と刺激を受ける日々。さまざまな人との出会いを重ねる中で、自分も会社をつくりたいという思いが少しずつ形になっていきました。
ただ、起業を決めた時点で、明確な事業が決まっていたわけではありません。
その点は中尾さんも同じでした。
「最初は何をやるかなんて、よく分かっていませんでした。」
完成した計画があったわけではなく、人との出会いや経験を重ねながら、自分たちの進む道を見つけていった。
二人の歩みには、そんな共通点がありました。
学生の挑戦を支える、島根大学の環境づくり

学生が「起業してみたい」と思っても、一人で事業を形にするのは簡単ではありません。
島根大学では、学生による大学発ベンチャー認定制度、起業相談、インキュベーションルーム(学生市民交流ハウス「FLAT」にて)など 、学生の挑戦を支えるさまざまな仕組みを整えています。
大谷学長は、起業は特別な人だけが目指すものではなく、「やってみたい」という思いを形にする選択肢の一つだと話します。
そのため大学では、学生が気軽に相談できる環境づくりを進めるとともに、教員や地域企業とのつながりを生かしながら、アイデアを事業へ育てる仕組みづくりにも取り組んできました。実際、毎月FLATで開いている学生懇談会「学長と語ろう」の場で黒田さんのリクエストを受けて、学長が動いて学生ベンチャーの認定制度ができました。
実際に制度を活用した中尾さんと黒田さんも、大学の支援が挑戦を後押ししてくれたと振り返ります。
事業計画や起業までの進め方を相談できるだけでなく、大学公認という信頼を通じて地域企業との新たなつながりが生まれたことも、大きな支えになったそうです。
島根大学の起業支援は、会社を設立することだけを目的とした制度ではありません。
学生が地域や社会の課題に目を向け、自ら考え、行動する。その最初の一歩を支えることも、大切な役割の一つです。
大学の制度に加え、地域企業や自治体との連携があることで、学生の「やってみたい」という思いは、実際のプロジェクトや事業へと少しずつ形になっていきます。
制度だけでなく、人とのつながりや地域との関わりも含めて学生の挑戦を支えていることが、島根大学ならではの強みだと感じました。

「まずやってみる」ことから、未来は動き出す
中尾さんも黒田さんも、最初から明確な答えを持って起業したわけではありませんでした。
中尾さんは、事業内容も会社の設立方法も分からないところからスタートし、周囲へ相談しながら少しずつ会社を形にしていきました。
黒田さんも、起業した当初から事業の方向性が定まっていたわけではありません。さまざまな人と出会い、経験を重ねる中で、自分が進むべき道を見つけていったといいます。
二人に共通していたのは、完璧を待たず、一歩踏み出していたことでした。
完璧な準備が整うのを待つのではなく、一歩踏み出したからこそ新しい出会いが生まれ、その経験が次の挑戦へとつながっていきました。
最後に、これから社会へ羽ばたく学生や、起業を目指す後輩たちへメッセージを伺いました。

黒田さんは、まずは普段とは違う環境へ足を運び、多くの人と話してみてほしいと語ります。普段関わらない人と話すことで、自分の視野が広がると語ります。
さらに、人との出会いを大切にするためには、謙虚な姿勢で学び続けることも欠かせないと話しました。

一方、中尾さんは、インドでの経験を通して、自分が恵まれた環境にいることに気づいたと振り返ります。
「まず、置かれた環境すべてに感謝すること。そして、何かを目指すきっかけを掴んだなら、その時は自分を使い果たすくらい、やってみてほしい。」
二人の言葉から伝わってきたのは、挑戦とは特別な才能を持つ人だけのものではなく、小さな一歩の積み重ねから始まるものだということでした。
「やってみたい」を育てる場所

鼎談の最後、大谷学長は学生たちへ次のようなメッセージを送りました。
「学生一人ひとりが、それぞれのポテンシャルを持っています。きっかけは人それぞれですが、その力を発揮できる環境を大学としてつくっていきたい。」
島根大学では、インキュベーションルームの開設や大学発ベンチャー認定制度など、学生の挑戦を支える環境づくりが進められています。
大学は、学びの場であると同時に、新しいことへ挑戦するためのスタートラインでもあります。
「やってみたい。」
その小さな一歩が、新しい出会いや経験につながり、自分でも想像しなかった未来を切り拓いていくかもしれません。
今回の鼎談は、学生一人ひとりの「やってみたい」という気持ちを大切にし、その挑戦を後押しする。そんな島根大学が目指し続ける姿を教えてくれました。
PROFILE
中尾 香達(なかお・こうたつ)さん
日本AI開発センター株式会社 代表取締役
島根大学総合理工学部在学中の2023年、休学してインドへ渡航。現地での経験をきっかけに帰国後すぐ起業し、AIソリューション開発やコンサルティングを上場企業から中小企業まで幅広く手がける。島根大学発ベンチャーとして、地域企業のDX/AX推進にも取り組んでいる。
黒田 隆史(くろだ・たかふみ)さん
株式会社ゲームガム CEO
島根大学在学中に起業。学生時代は研究や筋力トレーニングに打ち込み、多くの人との出会いを通して起業を志す。現在はゲーム開発やデジタルコンテンツ制作を中心に事業を展開し、「人の笑顔が近くで見える仕事」を目指して挑戦を続けている。

ShimaDAYライター
まつD島根県出身のクリエイティブ・ディレクター。
日々日々映像の世界にダイブしている映画ジャンキーなので慢性的寝不足。
島根を愛し、島根に愛されるオトコを目指して今日も様々なPR案件にチャレンジしている。

まつD
島根県出身のクリエイティブ・ディレクター。
日々日々映像の世界にダイブしている映画ジャンキーなので慢性的寝不足。
島根を愛し、島根に愛されるオトコを目指して今日も様々なPR案件にチャレンジしている。







