公開日 2026.07.31

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「伝統木工の美と継承」-舟木木工所が島根大学で講演​

日本の伝統木工技術「組子細工」
島大生が“現代の名工”から継承への思いを学ぶ

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目次

組子細工が伝えるものづくりの精神

6月12日(金)、総合理工学部の授業「住環境基礎」において、舟木木工所の舟木清代表と野尻かおり氏を外部講師としてお招きし、講演を行っていただきました。
舟木木工所は、島根大学総合理工学部建築デザイン学科清水貴史研究室および、階段をはじめとする建築製品の開発を手掛けるカツデン株式会社と共同研究を進めており、これをきっかけとして今回の講演が実現しました。
舟木代表は、細く加工した木材を釘や金具を使わずに組み合わせて幾何学模様を作る技法「組子細工」の職人として、厚生労働省が認定する「卓越した技能者(現代の名工)」の一人にも選ばれています。
講演は「伝統木工の美と継承」と題し、舟木代表はまず「自分が経験してきたことを皆さんに伝えたい」と学生に伝えました。

舟木木工所、島根大学、カツデン株式会社の三者は、階段製品におけるデザイン性、安全性、機能性の両立を目指して共同研究を進めています。舟木木工所が培ってきた卓越した組子細工の技術は、この共同研究にも生かされています。
共同研究について舟木代表は「非常に良い話をいただいた。共同研究を通じて、この技術を未来に継承したい」と語ります。

共同研究の様子。島根大学では教員だけではなく、学生も一緒になってこの共同研究に取り組んでいる。
総合理工学部 建築デザイン学科 清水 貴史 准教授 | 島根大学ウェブマガジン ShimaDAY(シマデイ)

現代の名工が学生に託した、未来へのメッセージ

組子細工のルーツは飛鳥時代にまでさかのぼります。最大の特徴は、釘を一切使わずに木材を組み上げる伝統技法であることです。
組子細工は、細く削り出した木片を一つひとつ手作業で組み合わせ、緻密な幾何学模様を生み出します。その美しさは単なる装飾にとどまらず、構造と機能が一体となった日本ならではの技術として受け継がれてきました。
一つひとつの木片自体の強度は決して高くありません。しかし、それらが何万、何十万という数で精巧に組み合わされることで、全体として非常に高い強度を発揮するといいます。
繊細な美しさと高い強度を両立する組子細工。その一枚の中には、職人の知恵が息づいているのです。舟木代表は、「組子づくりには、素材を読む力、道具を扱う力、そして組む順序を考える力が欠かせません」と語り、それは「木の声を聴く」ことだと表現しました。

「学生にも、その技術を是非学び、継承してもらいたい。そして、その建築の技術をもって住みよい日本を担っていただきたい」

舟木代表の話からは、組子細工という伝統技術そのものだけでなく、その背景にある考え方を建築設計に活かしてほしいという思いが感じられました。
現代では、均一で安価な製品を大量に生産・供給することが一般的になっています。しかし、これからの住環境づくりには、効率性だけではなく、素材の特性や経年変化、修理しながら長く使い続けるという視点も求められます。舟木代表は、建物は完成した瞬間が最高の状態なのではなく、使い込むほどに味わいを増し、修理を重ねながら長く受け継がれるものであってほしいと語りました。

また、AIや3Dプリンターなどの先端技術と、組子細工に代表される職人の手仕事は対立するものではありません。デジタルとアナログを融合させ、新しい価値を生み出せるのはこれからの世代だと、次世代の建築を担う若い学生たちに思いを伝えました。
環境保全についても、「使わないことがエコ」という考え方だけでは十分ではありません。木を植え、育て、使い、再び植える。その循環を維持することが、持続可能な社会を支える重要な考え方だと説明されました。
「木は生き物であり、一本一本に個性がある」。その個性を見極めながら美しさと機能性を生み出す組子細工の知恵は、現代にも通じるデザインの考え方といえるでしょう。
古いものの中にある「未来のヒント」を見つけ出し、新たな発想で次の時代へつないでほしい。舟木代表の講演には、そんなメッセージが込められていました。

講演終了後、学生たちは舟木木工所で実際に製作されている組子細工の工芸品を手に取り、間近で見学しました。
舟木代表や野尻さんに組子細工の組み立ての工程や、色付けされているように見える部分も実際には着色がされておらず、木材本来の色を活かしてデザインされていることなどの説明を受け、興味深そうに聞き入っていました。

ワークショップで実際に組子細工を体験

講演の最後に、「もし組子細工に興味がある方が多くいれば、ワークショップをやりましょう」と提案した野尻さん。その結果、20名もの学生が参加を希望しました。
野尻さんと総合理工学部のシュレスタ特任助教による準備・協力のもと、7月17日(金)、組子細工のワークショップが実現しました。

組子細工の模様の意味などについて学生に説明する野尻さん


ワークショップでは、舟木木工所が考案し、商品化もしている組子細工キットを使って、学生たちは組子の組み立てに挑戦しました。
パーツ自体は職人の精密な加工によってあらかじめ作られているため、今回体験したのはそれらを組み上げる工程です。しかし、一つひとつの部材を丁寧に組み合わせていく作業には高い集中力が求められ、学生たちは試行錯誤しながら真剣な表情で取り組んでいました。

ワークショップに参加した総合理工学部2年の山本 朔哉さんは、「自分は不器用で細かい作業が苦手ですが、今回の組み立て作業はとても楽しく取り組むことができました。事前に舟木代表の講演を聞いていたため、一つひとつのパーツが職人の精巧な手作業によって作られていることを実感しながら組み立てることができ、ものづくりの奥深さを改めて感じました」と、体験を振り返りました。

また、同じく総合理工学部2年の近藤 いちごさんは、「今回体験させていただいたのは組み立ての工程だけだったため、いわばおいしいところだけをさせてもらったように思います。実際には、その組み立てがきちんとできるように木材を正確に加工しなければならないので、非常に手間と技術を要する大変な仕事だと実感しました」と、職人の技術の高さについて感想を述べました。

このワークショップを企画した舟木木工所の野尻さんは、学生たちが熱心かつ自主的に取り組んでいたことが印象的だったと語りました。
また、同じ説明書を使っていても人によって組み立て方や作業の進め方に違いがあり、自身にとっても多くの学びがあったとのことでした。

完成した組子細工「八重桜亀甲文様」


今回の講演とワークショップは、学生たちにとって、「組子細工」という伝統木工技術に触れ、多くを学ぶ貴重な機会となりました。
将来、さまざまな形で建築分野に携わっていくであろう学生たちにとって、組子細工に息づく職人の手仕事への思いや、舟木代表の「木の声を聴く」というものづくりの考え方に触れられたことは、貴重な経験になったことでしょう。
また、普段何気なく目にしている模様や形にも一つひとつ意味が込められていることを学び、そうした考え方を今後どのように建築へ取り入れていくかを考える良いきっかけになったのではないでしょうか。

この取材を通じて、本学の学生たちが、これまで接する機会のなかった世界に強い関心を持ち、積極的に学ぼうとする姿が非常に印象的でした。
実際に見て、聞いて、体験するなかで得た気づきや学びは、今後の学修や将来の進路を考える上でも貴重な財産になることでしょう。
これからもさまざまな伝統や文化、技術に触れながら、視野を広げ、自らの可能性をさらに伸ばしていってくれることを願っています。

ShimaDAYライター
メナ
広島県出身のカープファン。島根大学企画広報課職員。
趣味はカフェイン摂取。「あいほの」さんにご指導賜りながら同じく双子育児に奮闘中。ライブのチケットやswitch2などあらゆる抽選に当たったことがない。たまに剣道をしている。花粉症。

ShimaDAYライター
メナ

広島県出身のカープファン。島根大学企画広報課職員。趣味はカフェイン摂取。「あいほの」さんにご指導賜りながら同じく双子育児に奮闘中。ライブのチケットやswitch2などあらゆる抽選に当たったことがない。たまに剣道をしている。花粉症。

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